仕事を依頼したくなる「代(しろ)」が見える人

仕事を依頼したくなる「代(しろ)」が見える人

「この仕事、誰に依頼しようかな。」
もちろん、最低限のスキルは必要だが、実際に選ぶ際のものさしはスキルの高さではない。
かといってコミュニケーションスキルだとか、思考力だとか、そういう画一的な何かを持っているかどうかでもない。
仕事を依頼したいと感じる人の共通点…考えてみるとそれは「代」だな、と思う。

例えば、どんなことでも明るく受け止める、理解力が高くスピードが早い、 コミュニケーションが円滑で負担が少ない、笑顔が絶えず一緒にいると楽しい…
もちろん最低限のスキルは必要になるとしても、何かその人の特徴が伝わっている人に頼みたくなる。

例えば、地域の情報を発信するメディアの記事執筆であれば、どんなことでも楽しめる好奇心の高さが必要になってくるし、
クライアントの考え方が固まっていないプロジェクトでは気持ちに寄り添えることが必要になる。
マニュアルのない仕事では思考力が生きるし、マニュアルがある仕事ではスピードが生きる。
ディレクションする時間に余裕がないプロジェクトではコミュニケーションが円滑なことがとてもありがたい。
イベントを行うときにはニコニコ楽しそうにしている人が必要だし、
学習の場ではできない人に付き添って一緒にやろうという気持ちが大事になる。

仕事は作業そのものだけだけのことは少ない。
ましてやフリーランスが行うような自律が必要になる仕事は特に。

だから、縫い代とか伸び代のような”代”が必要になる。

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「自律した働き方」というのは捉え方が難しい。
「自律」は「自立」とは異なる。

「自立」とはミスをしない、依頼に忠実に行うなど、他者に依存しないという意味が大きい感じがする。
「自律」はもっと柔らかいイメージで、自らが考えたことに従って行動することだ。

ミスをしないようにしなければならない、依頼に忠実でなければならない、というふうに
「しっかりやらねばならぬ=自立しなければならない」という考えは、実は自律からはかなり遠い。
頑なな分イレギュラーにとても弱い。

頑なな人は、その人の「代」の部分が伝わってこないことが多い。
どういうタイプなのかというのが「自分をオープンにしない人」というイメージが大半を占めてしまい、
それ以外の部分がうまく伝わってこない。


とにかくマイナスにうつらないように、ということに徹底すると、
本当のその人が見えてこない。
当然「代」も見えてこない。

そういう人にはとても仕事が頼みにくい。
どういうふうに発注したら良い仕事をしてくれるのかがわからない。
本当に気持ちよく仕事をしてくれるのかがわからない。
もやもやとしたわからない、に覆われている人には仕事は頼みにくい。

逆にわからないことは「わからない」、できないことは「できない」、やりたくないことは「やりたくない」と
自分の弱点を明らかにしながらも、自分の良いところ、好きなものをしっかり持っている人には、頼みやすい。
どういうタイプなのかはっきりとわかれば、コミュニケーションも取りやすくなるし、仕事の進め方も想像できる。

そしてもしトラブルがあったとしても、また仕事に抜けた部分があったとしても、
お互いの「代」の部分が伸びることで、空白が埋まっていく。

だからその空白を埋められる「代」がある人が求められる。

先にも言ったように「代」は決まった形をしていない。
いろんな代があるからこそ、良い。

スキルが低くても「代」さえあれば、その後でいくらでもついてくる。

世界は広く、わたしたちが想像できないほど幅広いニーズがあるはずだ。
そしてICTが発達したおかげで、世界のどこかに求める人がいれば、それが仕事となる時代に突入している。
それなのにわたしたちの頭は「こうならねばならぬ」と凝り固まっている。

凝り固まった「ならぬ」から抜け出し、自分の「代」を大いに伸ばすこと。
それが仕事の受注にはさらに大事な時代に入っていると思う。

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自分は頑張っているのに、そうでない人の方が恵まれて見える。
「不公平だ」「あのクライアントは私のことが嫌いなのかもしれない」「自分は適切に評価されていない」「まだ努力が足りない」
悩む。

しかしその実、客観的に見ると不公平でもないし、好き嫌いだけじゃない、評価されていないのでもないし、努力が足りないのでもない。
どうしたらわたしたちは仕事を得るための代をつくるには何をすればいいのか。

まずは基礎的な技術をしっかりと身につけること。
基礎的なことで時間がかかっていれば、余裕は生まれない。
基礎は学習しやすい。できるだけ早く基礎を学んでしまうことが良い。

経済的に困っているのであれば、パートやアルバイトなど確実に稼ぐ方法を考えて、生活を落ち着かせることも必要。
全く余裕がない中で学び続けるのはとても難しい。
もし耐えられたとしても、その忍耐の中では余裕がなくなってしまう。
うまく学んでいくためには、焦らず土台から作っていくことが必要だ。

そして、専門的なスキルに囚われず、できるだけ多くの体験が必要になる。
体験を通して、自分がどう感じているのか、どういう価値観を持っているのかを感じていくことが必要になる。
基礎を修了した後は、答えのない学びに突入する。
答えのない学びは、体験から得るのがもっとも効率的で成長も早い。

さらに、体験して感じたことを振り返る。
このときに重要なことは、自分の感情に蓋をしないこと。
例えば、自分の課題に指摘をされて「嫌だな」と思ったとしても、「そう思ってはダメだ」と否定しない。
「私は指摘をされて嫌だと思っているんだな」と自分のことを受け入れる。
その上で「どうしたい?」と自分に聞いてみる。
自分との問答を繰り返していく中で、自分の輪郭が少しずつ見えるようになる。
感情を無視していると、どこかで無理がくる。
自分の感情を受け入れながら進んでいく方法を身につけるべきだ。

自分が見えてくると、それまで真っ暗闇だった視界も徐々に広がり、新しい世界も見えてくる。
それを繰り返していくことで、「代」ができてくる。

仕事を獲得するためには、視野が狭くなってはいけない。
特にわたしたちのような自律することが求められるフリーランスは、「代」という余裕がとても大切だ。