外部の人間としての学校への関わり方〜南紀支援学校・はまゆう支援学校合同運営協議会に参加して〜

外部の人間としての学校への関わり方〜南紀支援学校・はまゆう支援学校合同運営協議会に参加して〜

「子どもたちに『自律』を伝えたい」
その思いは日に日に高まっていく。

大人に学ぶ場を提供していて、最も課題になるのが自律だからだ。
スキルや技術は後からついてくるし、他の人にお願いすることだってできる。
仕事を行うのに大切なのは、「自分の価値観に基づいて選択し行動する」ことだと毎日のように痛感する。

仕事とは辛いことでも我慢することであり、「こうであるべき」という枠にはまることだという定義を
人口の何%が思っているのか調べようもないが、地域が元気にならないことは容易に想像できる。

そのように考えるきっかけは、わたしたちが過ごしてきた子ども時代にあるのだと思う。
「こうあるべき」「人に迷惑をかけてはいけない」そういう言葉にがんじがらめになっている。
「こうあるべき」という言葉は、自分だけでなく、他人をも巻き込んでしまう。
他人の価値観を容認することができず、何かを形にしていこうという時に衝突を引き起こし、けして混じり合わない。
それでも何十年とそう思い込んできたものは、なかなか変わることは難しい。

しかし、決して悲観はしていない。
徐々に「自分を知る」ことが、楽に豊かに生きていくのに必要だと理解してくれてきている。
時間はかかるけれども、きっと伝えることができると信じている。

それでも、辛い環境の中で「根性だ」と我慢してきた時間は取り戻せない。
一人一人は素晴らしいのに、それを発揮できないのは、地域の、国の、人類の損失であると感じる。

だから、子どものうちから知って欲しい。そして周りの大人にも知って欲しい。
「こうあるべき」という形など実は幻想でであること。
「そうは言っても」という言葉は単なる思考停止であること。
自分が枠にはまることが、生きるのが辛いという人を生む環境に加担してしまうということ。

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令和3年度、南紀支援学校の運営協議会委員に選出していただいた。
校長先生のナイスな判断で今年から「分科会」として委員が動くことになっており、医療・福祉・進路・地域という4つの分科会に分かれて活動している。

わたしは「進路」担当。

わたしが役割だと考えているのは、現在のところこの4つだ

  1. テレワークをはじめとするICTの活用法の提案と実践
  2. クリエイティブを生かした幅広い活動
  3. 企業のテレワークの導入と、テレワーカーの採用の両面での支援
  4. 企画・制作・流通などを請負い仕事を創造する

生徒に授業を提供するだけでなく、先生や保護者にICTやクリエイティブを理解していただくこともとても重要なことだと位置付けていて、今年から保護者への個別の相談を受け付けたり、学校にICTを知ってもらうイベントを組んでもらったりしている。

そして今年から検討がはじまったのが「クリエイティブを生かした活動」で、TETAUのデザイナーたちと学校訪問をしたりして、何ができるか検討をスタートさせた。

企業に対してのアプローチはまだまだ小さいが、授業に地域の企業を巻き込み、一緒に活動するということを試験的に行いはじめた。企業側にも学校側にもお互いに良い刺激があると考えている。忙しい企業がこうして地域貢献の事業に少ない労力で参加できる環境をつくり、またそれが企業にとっても刺激になるクオリティで行えば、参加してくれる企業は増えるだろうと感じている。

そしてこれから挑みたいと考えているのが、仕事の創出。まだはっきりとは見えていないが、TETAUがひとつの選択肢となりえるように、仕事を創造し、仕組みをつくりたいと考えている。

大切なのはコンセプトである。どう進めるのかの下地となる考え方は「自律」だということを忘れないようにしたい。
ICTを取り扱う技術や、クリエイティブのスキルに囚われてしまわないように。
丁寧に伝えることもめげずにやり続けていきたい。

自分を解放しても良い、クリエイティブな環境に出会ったときの子どもたちの顔を見るのは格別な瞬間だ。
子どもたちに「あなたの価値観を大事にして欲しい」と伝えられるように、TETAUがそれを実現していかなければならないことを改めて考えていきたい。

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こうした活動は一見デザイナーの活動には見えない。
狭義の意味のデザインではそうだが、広義の意味のデザインとしてはこれこそデザインだと思っている。

課題を発見し、資源を見つめ、必要なものを創り出す。
有形、無形に囚われることなく、発見・解決・創造を行う人、それがデザイナーである。
常にそういう視点でありたいと考えている。